## ノージックのアナーキー・国家・ユートピアと時間
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ノージックの最小国家と時間
ノージックは、国家の正当性を論じるにあたり、ロック的な自然状態から出発します。
自然状態において、個人は自然権を有しており、その中には自己所有権も含まれます。自己所有権は、自分自身だけでなく、自身の労働やその成果も含まれます。
ノージックは、国家の役割を個人の権利を保護することに限定した「最小国家」を提唱しました。
最小国家は、暴力の行使を独占し、契約の履行を保証することで、個人の権利と自由を最大限に尊重します。
時間という観点から見ると、ノージックの最小国家は、個人が自由に活動し、自己実現を追求するための時間を最大限に保障するものと言えます。
なぜなら、最小国家は個人の経済活動や私生活に干渉せず、自己決定と自由な選択を尊重するからです。
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正義論における時間
ノージックは、分配の正義について、歴史的過程を重視する「エンタイトルメント理論」を展開しました。
エンタイトルメント理論は、過去の正当な取得と移転に基づいて現在の所有が正当化されるという考え方です。
この理論において、時間は重要な要素となります。
過去の出来事、すなわち、資源の初期取得やその後の自由な交換が、現在の所有の正当性を決定づけるからです。
ノージックは、特定の分配パターンを実現するために個人の権利を侵害することを否定し、個人が自由に活動した結果としての分配を正当とみなしました。
時間と権利の関係に着目すると、ノージックのエンタイトルメント理論は、個人が自身の労働や才能を自由に使い、その成果を享受する権利を時間軸に沿って保障するものと言えるでしょう。
ただし、ノージック自身は時間について詳細な分析を行っているわけではありません。
彼の議論は、時間という要素を前提としつつも、主に権利や自由、国家の役割といった概念に焦点を当てています。