## ニーブールのローマ史の美
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叙述の明晰さと力強さ
ニーブールの『ローマ史』は、その叙述の明晰さと力強さが大きな魅力となっています。複雑な歴史的事実や人物相関を、簡潔ながらも的確な文章で描写し、読者に鮮やかなイメージを喚起します。これは、ニーブール自身が古典的な教養を深く身につけていたこと、そして歴史家としての洞察力に優れていたことに起因していると考えられます。
例えば、共和政ローマの衰退過程や、カエサルの登場と暗殺といった劇的な場面においても、感情的な表現を抑制しつつ、事実を淡々と積み重ねることで、歴史の持つ重みと必然性を浮き彫りにしています。
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史料批判に基づいた客観性
ニーブールは、当時の歴史研究において主流であった伝説や逸話を排除し、碑文や公文書といった一次史料に基づいた客観的な歴史記述を目指しました。史料の信頼性を厳密に吟味し、その解釈においても慎重な姿勢を貫いています。
この姿勢は、『ローマ史』全体にわたって貫かれており、歴史的事実に対する信頼性を高めているだけでなく、読者自身の歴史解釈を促す効果も生み出しています。
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ローマ人への深い理解と共感
ニーブールは、単なる歴史的事実の羅列ではなく、ローマ人たちの考え方や行動原理、社会構造などを深く理解しようと努めました。そして、その理解に基づいた上で、ローマ人の偉大さとともに、その限界や矛盾をも描き出しています。
特に、共和政ローマの建国期からその崩壊に至るまでの過程において、ローマ人たちが抱えていた理想と現実の葛藤、そして人間の持つ普遍的な側面を浮き彫りにしている点が、読者の共感を呼んでいます。