ニーブールのローマ史の原点
バルトホルト・ゲオルク・ニーブールについて
バルトホルト・ゲオルク・ニーブール(1776-1831)は、ドイツの歴史家です。彼は、ローマ史に関する先駆的な業績で最もよく知られています。彼の最も有名な作品は、”Römische Geschichte”(ローマ史)であり、彼の生涯で3巻が出版されました。
ローマ史の執筆のきっかけ
ニーブールがローマ史を書き始めたきっかけは、いくつかの要因が考えられます。
1. 古典文化への深い興味
ニーブールは幼い頃から古典文化に深い興味を持っていました。彼は、ギリシャ語とラテン語を流暢に話し、古代の歴史と文学を深く研究しました。彼は、ローマ帝国の興隆と衰退の物語に特に魅了されていました。
2. 当時のローマ史研究への不満
18世紀後半から19世紀初頭にかけて、ローマ史の研究は、伝説や逸話、偏った解釈に満ちていました。ニーブールは、これらの問題点に不満を抱き、より正確で客観的なローマ史を執筆することを目指しました。
3. ドイツ・ナショナリズムの高まり
ニーブールは、ナポレオン戦争後のドイツ・ナショナリズムの高まりの中で研究を行いました。彼は、古代ローマの歴史から、当時のドイツに教訓を引き出そうとしました。
4. 大学教授としての立場
ニーブールは、1810年にベルリン大学の教授に就任しました。この職位は、彼にローマ史の研究に専念するための時間と資源を提供しました。
ローマ史の特徴
ニーブールのローマ史は、従来のローマ史とは大きく異なる特徴を持っていました。
1. 史料批判に基づいた厳密な歴史叙述
ニーブールは、古代の文献や碑文などの史料を批判的に分析し、信頼できる情報だけを用いて歴史を再構築しようとしました。彼は、伝説や逸話を排除し、可能な限り客観的な歴史叙述を目指しました。
2. ローマ国家の政治制度と社会構造への重視
ニーブールは、ローマ史を単なる政治史としてではなく、政治制度、社会構造、経済活動、宗教など、多角的な視点から分析しました。彼は、ローマ帝国の成功と失敗の要因を、これらの要素の相互作用から説明しようとしました。
3. 簡潔で明快な文章
ニーブールは、難解な学術用語を避け、簡潔で明快な文章で歴史を記述しました。彼の著作は、専門の歴史家だけでなく、一般の読者にも広く読まれることになりました。
これらの要因が複合的に作用し、ニーブールは「ローマ史」を執筆することになったと考えられます。