## ニーチェの道徳の系譜の話法
###
問答法
『道徳の系譜』では、ニーチェは頻繁に問答法を用いています。
彼は自問自答形式で議論を進めることによって、読者を思考のプロセスに巻き込み、自らの解答を導き出すように仕向けます。
例えば、「善と悪の彼岸」といった他の著作でも多用されているように、
「～ではないだろうか？」
「～はどうだろう？」
といった反語的な問いかけによって、読者に疑問を投げかけ、深く考えさせることを促します。
###
比喩と隠喩
ニーチェは複雑な概念を分かりやすく説明するために、比喩や隠喩を多用しています。
例えば、「金髪獣」や「鷹」といった比喩を用いて、力への意志や高貴な精神を表現しています。
また、「家畜化」や「債務者と債権者」といった隠喩を用いて、キリスト教的な道徳や伝統的な価値観を批判しています。
###
皮肉と逆説
ニーチェは、伝統的な価値観や道徳を批判するために、皮肉や逆説を効果的に用いています。
例えば、「憐れみ」や「同情」といった一見すると美徳とされる概念を、弱者の戦略と解釈し、痛烈に批判しています。
また、「神は死んだ」という有名な言葉は、既存の価値観の崩壊と新しい価値観の創造を象徴する逆説的な表現と言えるでしょう。
###
歴史的分析
ニーチェは、道徳の起源を歴史的に分析することで、現代社会における道徳の相対性を明らかにしようとします。
彼は、善悪の概念が時代や社会によって変化してきたことを示すために、古代ギリシャから現代に至るまでの思想史を辿ります。
そして、現代社会の道徳が、キリスト教や民主主義の影響を受けた「奴隷道徳」に支配されていると批判します。