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ニーチェの道徳の系譜に影響を与えた本

ニーチェの道徳の系譜に影響を与えた本

ショーペンハウアー著「意志と表象としての世界」の影響

ニーチェの道徳の系譜に大きな影響を与えた一冊として、アルトゥル・ショーペンハウアーの主著「意志と表象としての世界」が挙げられます。この書は、ショーペンハウアーの哲学体系を網羅した壮大な作品であり、ニーチェの思想形成に決定的な影響を与えたと言われています。

「意志と表象としての世界」で展開されるショーペンハウアーの哲学は、カントの認識論を基盤としつつ、インド哲学の影響も色濃く反映した独特なものです。ショーペンハウアーによれば、我々が認識するこの世界は、すべて表象としてしか存在しません。そして、その表象の根底には、盲目的で非合理的な「意志」が横たわっているとされます。

ニーチェは、ショーペンハウアーのこの「意志」の概念に深く影響を受けました。特に、ショーペンハウアーが「意志」を、個々の生物の生存欲求を超えた、宇宙的な生命の衝動として捉えている点に、ニーチェは共感と衝撃を覚えたようです。

ショーペンハウアーは、この「意志」の非合理性を克服し、苦悩に満ちた現実世界から解脱するために、芸術による一時的な慰藉や、禁欲的な生き方による「意志」の否定を提唱しました。

ニーチェは、ショーペンハウアーの思想を批判的に継承しながらも、「意志」への肯定という、全く異なる方向へと進んでいきます。ニーチェは、ショーペンハウアーの「意志」を、力への意志として再解釈し、人間存在の根源的な力として肯定的に捉え直しました。

「道徳の系譜」においてニーチェは、従来の道徳、特にキリスト教道徳を、「力への意志」の衰退として痛烈に批判します。ニーチェは、弱者が強者を支配するために作り出した虚構として、従来の道徳を断罪し、力強く生きることを肯定する新しい価値観の必要性を訴えました。

このように、「意志と表象としての世界」は、ニーチェの思想、特に「道徳の系譜」における道徳批判の根底に大きな影響を与えたと言えます。ショーペンハウアーの「意志」の概念を起点として、ニーチェは独自の思想を展開し、西洋哲学に大きな足跡を残したのです。

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