## ニーチェの悲劇の誕生と作者
ニーチェにおける「悲劇の誕生」の位置づけ
「悲劇の誕生」は、フリードリヒ・ニーチェが28歳の若さで発表した処女作です。1872年に出版され、正式なタイトルは『悲劇の誕生 – ギリシャ文化とペシミズムより』です。この作品は、古典文献学者として出発したニーチェの、古代ギリシャ悲劇に対する独自の解釈を提示したもので、その後の彼の思想の根幹を成す重要な著作とされています。
作品の内容と特徴
本書では、古代ギリシャ悲劇を、ディオニソス的なものとアポロン的なものの対立と融合によって解釈しています。
ディオニソス的なものは、陶酔、混沌、生の衝動などを表し、アポロン的なものは、理性、秩序、形式美などを表します。
ニーチェは、ギリシャ悲劇においては、この対立する二つの原理が融合し、生の苦悩や悲惨さを直視しつつも、それを肯定的に受け入れる力強い生の肯定が歌われていると主張しました。
そして、現代こそが、この古代ギリシャの悲劇精神を必要としていると説いています。
当時の反響
「悲劇の誕生」は、従来の古典文献学の枠組みを超えた大胆な解釈であったため、当時の学界からは厳しい批判を受けました。
特に、ニーチェの師であるリッチュル学派からは、その非学問的な方法と内容に対して痛烈な批判が浴びせられました。
しかし、その一方で、ワーグナーなど一部の芸術家からは高く評価され、ニーチェの名を世に知らしめることとなりました。