ニーチェのアンチ・クリストの原点
ニーチェにおけるキリスト教批判の萌芽
ニーチェのキリスト教に対する批判的な態度は、
彼の青年期にすでに芽生えていました。
敬虔な牧師の家に生まれたニーチェは、
幼い頃から聖書やキリスト教神学に親しんでいました。
しかし、古典文献や哲学、音楽への造詣を深めるにつれて、
彼は次第にキリスト教の教義や道徳に疑問を抱くようになります。
ショーペンハウアーの影響
ニーチェの思想に大きな影響を与えたのが、
ドイツの哲学者アルトゥル・ショーペンハウアーです。
ショーペンハウアーは、
世界は盲目的な意志によって支配されているとし、
キリスト教をこの意志からの解放を妨げるものと見なしていました。
ニーチェはショーペンハウアーの思想に共鳴し、
彼自身のキリスト教批判を深めていきました。
「道徳の系譜」における批判
ニーチェは1887年に出版した著書「道徳の系譜」の中で、
キリスト教の道徳を徹底的に批判しています。
彼はキリスト教の道徳を「奴隷道徳」と呼び、
弱者が強者を支配するために作り出したものと断じました。
ニーチェは、キリスト教の道徳が、
人間の力強い生命力を否定し、
退廃をもたらすと考えていました。
晩年の思想と「アンチ・クリスト」
ニーチェは晩年、「超人」という概念を提唱し、
従来の価値観を転覆することを目指しました。
彼はキリスト教を、
人間の弱さや退廃を肯定する「反自然的な」宗教と見なし、
「超人」の出現を阻むものとして激しく批判しました。
こうしたニーチェの晩年の思想が凝縮されているのが、
1888年に執筆された「アンチ・クリスト」です。
同書は、ニーチェのキリスト教批判の集大成と言えるでしょう。