## ニーチェの「ツァラトゥストラかく語りき」とアートとの関係
芸術の二つの類型：アポロン的とディオニソス的
「ツァラトゥストラかく語りき」の中で、ニーチェは芸術を理解する上で重要な二つの概念を提示しています。それが
**アポロン的**と**ディオニソス的**という考え方です。
#### アポロン的芸術衝動
アポロン的芸術衝動は、ギリシャ神話に登場する光の神アポロンに象徴されるように、
**秩序、形式、調和、理性**などを重視する芸術衝動です。
彫刻や建築など、明確な形を持つ芸術に典型的に見られます。
ニーチェは、アポロン的芸術衝動は、
**夢、幻想、そして美しい表象**を通して、我々を現実の苦しみから一時的に解放してくれるものだと考えています。
#### ディオニソス的芸術衝動
一方、ディオニソス的芸術衝動は、同じくギリシャ神話に登場する酒の神ディオニソスを象徴とし、
**陶酔、熱狂、混沌、本能**といった要素を重視します。
音楽、特に歌劇など、感情を強く揺さぶるような芸術に典型的に見られる傾向があります。
ニーチェは、ディオニソス的芸術衝動は、
**個人の自我の限界を突破し、万物と一体となるような陶酔体験**を通じて、生の歓喜を affirmation (肯定) するものだと考えています。
芸術の理想形：アポロン的とディオニソス的の統合
ニーチェは、アポロン的とディオニソス的という一見対照的な二つの芸術衝動は、
**本来は不可分な関係にある**と考えていました。
真に偉大な芸術作品は、この二つの衝動が調和し、統合されたものから生まれてくると彼は考えました。
例えば、ギリシャ悲劇は、アポロン的な美しい形式と、ディオニソス的な陶酔的な内容が融合した芸術の最高峰としてニーチェは高く評価しています。
ニーチェは、「ツァラトゥストラかく語りき」の中で、
**芸術は人生を肯定し、高めるための力**となりうると説いています。
そして、アポロン的とディオニソス的な芸術衝動の統合こそが、
**人間がより高次な存在へと至るための鍵**であると示唆していると言えるでしょう。