## ニュートンの自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)の批評
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賞賛
* **革新的な力学体系の構築:** プリンキピアは、運動の3法則と万有引力の法則を基礎として、地球上の物体の運動から天体の運動までを統一的に説明する力学体系を構築しました。これは、それまでのアリストテレス的な自然観を覆す、科学史上における革命的な出来事でした。ニュートンは、数学的な証明を用いることで、彼の理論の客観性と普遍性を主張しました。特に、微積分法を用いた運動の記述は、近代科学における数学の重要性を決定づけるものでした。
* **広範な自然現象の説明:** プリンキピアは、惑星の運動、月の軌道、潮汐現象、彗星の軌道など、当時未解明であった様々な自然現象を、彼の力学体系を用いることで見事に説明しました。これは、彼の理論の妥当性を示す強力な証拠となり、後の科学者たちに多大な影響を与えました。例えば、エドマンド・ハレーは、プリンキピアの理論を用いてハレー彗星の回帰を予測し、ニュートン力学の正しさを証明しました。
* **実験と観測に基づく厳密な議論:** ニュートンは、プリンキピアの中で、単に理論を展開するだけでなく、実験や観測のデータを引用し、彼の理論を裏付けることに注意を払いました。例えば、振り子の実験や、光の屈折の実験などが挙げられます。彼は、これらの実験結果を、数学的な厳密さを用いて分析し、彼の理論の正当性を主張しました。
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批判
* **万有引力の法則の概念的な問題:** プリンキピアで提唱された万有引力の法則は、離れた物体同士が瞬時に力を及ぼし合うという「遠隔作用」を前提としています。これは、デカルトなど一部の哲学者から、物理的な実体のない力として批判されました。彼らは、物体間の相互作用は、エーテルのような媒介物質を通じて伝達されるべきだと主張しました。
* **数学的な複雑さ:** プリンキピアは、高度な数学を用いて書かれており、当時の一般的な読者には理解が困難でした。これは、ニュートンの理論の普及を妨げる要因の一つとなりました。実際、ニュートン自身も、より多くの人に理解してもらうために、プリンキピアの内容を平易な言葉で解説した書物を出版しています。
* **絶対空間と絶対時間の概念:** ニュートンは、プリンキピアの中で、絶対空間と絶対時間という概念を導入しました。これは、物体の運動や位置を規定するための絶対的な基準となる空間と時間を想定するものです。しかし、ライプニッツなど一部の哲学者や科学者からは、絶対空間と絶対時間は観測不可能であり、科学的な概念としては不適切であると批判されました。彼らは、空間と時間は物体の関係によって規定される相対的なものであると主張しました。