ナボコフの青白い炎を面白く読む方法
ナボコフの仕掛けを楽しむ
「青白い炎」は、一見すると難解で複雑な作品に見えますが、ナボコフ独特のユーモアと文学的な仕掛けがふんだんに散りばめられており、それらを発見する楽しみが隠されています。まず、この作品は表面的には、シェイドという詩人が書いた999行の詩「青白い炎」とその注釈者であるキンボートによる注釈という構成を取っています。しかし、読み進めるうちに、キンボートの注釈がシェイドの詩をはるかに上回る長さに膨れ上がり、彼自身の妄想や奇妙な物語が展開されていくことに気づきます。
多重構造を読み解く
ナボコフは、この作品に幾重にも意味が重なり合う多層的な構造を持たせています。シェイドの詩は、一見すると彼の個人的な経験や哲学を歌ったものに過ぎないように見えますが、キンボートの注釈を通して、実は亡命貴族の王位継承を巡る陰謀が隠されているのではないかという疑いが浮上してきます。
さらに、キンボート自身の物語も、現実と妄想の境界線が曖昧になっていく中で、読者は何が真実で何が虚構なのかを見極めることが困難になっていきます。この現実と虚構が入り混じった世界観こそが、ナボコフ作品の最大の魅力と言えるでしょう。
隠された手がかりを追いかける
作品全体には、パズルのように散りばめられた隠喩や象徴、言葉遊びが散りばめられています。例えば、登場人物の名前は、シェイド(影)、キンボート(金の船)、グレーズ(狂気)など、その人物像や運命を暗示するような意味が込められています。
また、作中に登場する蝶は、変容と再生の象徴として重要な役割を果たしていますが、これはナボコフ自身が蝶の研究者であったこととも関連しています。このような隠された手がかりを見つけることで、作品への理解を深め、より一層楽しめるようになります。
注釈と本文を行き来する
「青白い炎」を読む上で重要なのは、シェイドの詩とキンボートの注釈を交互に読み進め、両者の関係性を読み解いていくことです。キンボートの注釈は、一見するとシェイドの詩とは関係のない内容に思えることもありますが、注意深く読むことで、詩の隠された意味やキンボート自身の内面が明らかになっていきます。
また、注釈を読みながら本文に戻り、注釈によってどのように解釈が変化するか、あるいは深まるかを意識することで、ナボコフの巧みな文章構成とユーモアをより深く味わうことができるでしょう。