ナイチンゲールの看護覚え書が扱う社会問題
### 1. 衛生状態の劣悪さについて
ナイチンゲールが活躍した19世紀半ば、病院は必ずしも清潔な場所ではなく、むしろ不衛生で危険な場所と認識されていました。病院内の空気や水、患者の排泄物などは適切に処理されず、感染症の温床となっていました。ナイチンゲールはクリミア戦争で従軍した経験から、病院内の劣悪な衛生状態が患者の死亡率を増加させていることを痛感しました。
### 2. 女性の社会進出の難しさについて
当時のイギリスでは、女性の社会進出は非常に限られていました。看護は「女性の仕事」とされていましたが、それはあくまで家庭内での世話をする役割の延長線上とみなされ、専門的な知識や技術を必要とする職業としては認められていませんでした。看護婦は社会的地位が低く、賃金も安かったため、貧困層の女性や未亡人が生活のために仕方なく就く仕事と見なされることも少なくありませんでした。
### 3. 看護の専門性の低さについて
当時の看護は、専門的な知識や技術に基づいたものではなく、経験や勘に頼ったものがほとんどでした。看護婦の教育制度も整っておらず、病院で働くためには医師や先輩看護婦の指示に従うことが求められました。ナイチンゲールは、このような状況を改善するために、看護を専門職として確立する必要性を強く訴えました。