ドワーキンの法の帝国の話法
解釈としての法
ドワーキンは、法を解釈的現象として捉え、その解釈活動を「誠実な努力の理論」によって説明しようとしました。「誠実な努力の理論」とは、法の解釈者が、過去の判例や法原則との整合性を保ちつつ、可能な限り最良の道徳的正当化を与える解釈を選択することによって、法の内容を決定していく過程を指します。
連鎖小説の比喩
ドワーキンは、法の解釈活動を、複数の作者によって順に書き継がれていく「連鎖小説」の執筆になぞらえています。各作者(=裁判官)は、先行する部分(=過去の判例や法原則)との整合性を保ちつつ、自己の解釈を物語(=法体系)に付け加えていきます。
理想的裁判官ヘラクレス
ドワーキンは、法解釈のモデルとして、「理想的裁判官ヘラクレス」という概念を提示しました。ヘラクレスは、超人的な能力と知識を有しており、法体系の全体像を完全に把握し、常に最良の解釈を選択することができます。もちろん、現実の裁判官がヘラクレスのような存在であることは不可能ですが、ヘラクレスは、法解釈における「誠実な努力」の目標となる理想像として機能します。
次元性
ドワーキンは、「適合性」と「最良の光における表示」という二つの次元から法解釈を捉えています。
適合性の次元
法解釈は、過去の判例や法原則との整合性を保つものでなければなりません。
最良の光における表示の次元
法解釈は、法体系全体を可能な限り最も道徳的に正当化できるものでなければなりません。
結論
ドワーキンは、これらの概念を用いることで、法解釈が単なる主観的な行為ではなく、客観的な基準に基づいて行われることを主張しました。