ドワーキンの法の帝国の美
ドワーキンが考える法の美しさとは
ロナルド・ドワーキンは、著書「法の帝国」において、法体系の美しさを論じています。彼は、法を単なる規則の寄せ集めではなく、一貫性と整合性を備えた、まるで文学作品のような「解釈的統一体」として捉えています。
ドワーキンにとって、法の美しさは、以下の2つの要素から成り立っています。
1. 整合性(Fit)
ドワーキンは、法体系は、過去の判決や法律と矛盾しないように解釈されるべきだと主張します。これは、法体系が、歴史的な文脈の中で、一貫した原則に基づいて構築されるべきだということを意味します。法体系が整合性を備えているとき、それはまるで複雑なパズルが美しく組み合わさっていくかのように、各要素が調和し、統一された全体像を描き出します。
2. 最良の道徳的解釈(Best Moral Justification)
ドワーキンは、法の解釈において、単に整合性だけでなく、倫理的な側面も重視しています。彼は、法体系は、自由、平等、正義といった、我々が共有する道徳的な価値観を最もよく体現するように解釈されるべきだと主張します。法体系が、これらの価値観を最大限に実現するように解釈されるとき、それは道徳的に優れたものとなり、美しさを放ちます。
ドワーキンは、法の解釈を、あたかも「連鎖小説」を執筆する作業に例えています。各裁判官は、過去の判決や法律という「過去の章」を受け継ぎ、その上で、整合性と最良の道徳的解釈に基づいて、新たな「章」を書き加えていくのです。このように、法は、過去の解釈と対話し、それを発展させながら、絶えず進化していく動的なシステムとして捉えられています。
ドワーキンにとって、法の美しさは、このような解釈の積み重ねによって、法体系が、より一貫性があり、より道徳的に優れたものへと向かっていく過程そのものの中に見出されるのです。