ドライサーのアメリカの悲劇の話法
語り手の視点
テオドール・ドライサーの『アメリカの悲劇』は、三人称全知の語り手を用いています。語り手は、登場人物たちの思考や感情を知ることができ、物語の様々な場面に読者を導いていきます。例えば、主人公クライド・グリフィスが、自身の社会的地位向上への渇望や、恋人ロバータ・オールデンとの関係に苦悩する様子を、語り手は詳細に描き出します。
自由間接話法の活用
ドライサーは、自由間接話法を効果的に用いることで、登場人物たちの内面世界を鮮やかに描き出しています。この技法により、語り手の声と登場人物の声が溶け合い、読者は登場人物たちの心情をよりリアルに感じ取ることができます。例えば、クライドが自身の置かれた状況に絶望し、ある決意を固めていく過程は、彼の内面を映し出す自由間接話法によって、読者に強く印象付けられます。
詳細な描写と自然主義
ドライサーは、自然主義文学の代表的な作家の一人として知られており、『アメリカの悲劇』においても、その特徴が顕著に表れています。彼は、舞台となる環境や登場人物たちの行動を、克明に描写することで、人間の運命が社会環境や経済状況によって大きく左右される様を、リアルに描き出しています。例えば、クライドが貧しい家庭環境で育ち、物質的な豊かさへの渇望を募らせていく過程は、当時のアメリカの社会状況を背景に、詳細な描写によって描かれています。
象徴主義
ドライサーは、物語の中で様々な象徴を用いることで、テーマをより深く掘り下げています。例えば、クライドが憧れる上流社会は、物質的な豊かさだけでなく、道徳的な退廃をも象徴しています。また、彼が恋心を抱く二人の女性、ロバータとソンドラは、それぞれ異なる価値観を象徴しており、彼の内面における葛藤を際立たせる役割を担っています。