ドライサーのアメリカの悲劇の構成

「アメリカの悲劇」は、大きく分けて二部構成と捉えることができます。第一部では主人公クライド・グリフィスが貧しい環境から抜け出し、物質的な成功を追い求める様子が描かれます。第二部では、クライドが自身の欲望と社会の道徳規範との間で葛藤し、最終的に悲劇的な結末を迎えるまでが描かれます。

第一部では、クライドの生い立ちから、叔父の工場で働くまでの様子が描かれます。貧しい伝道師の息子として生まれたクライドは、幼い頃から物質的な豊かさへの憧憬を抱いていました。ホテルのベルボーイとして働く中で上流階級の生活に触れたクライドは、その華やかな世界に強く惹かれていきます。

その後、叔父の紹介で工場で働く機会を得たクライドは、そこで出会ったロバータ・オールデンと恋仲になります。しかし、同時に上流階級の娘であるソンドラ・フィンチリーにも惹かれていくことになります。ロバータとの関係がクライドの社会的な成功を阻むと考えた彼は、やがて彼女を疎ましく思うようになります。

第二部では、クライドが自身の欲望と罪の意識に苦しみながらも、逃れられない運命へと向かっていく様子が描かれます。ロバータの妊娠が発覚し、彼女との結婚を迫られたクライドは、ソンドラとの将来を選ぶために、ロバータを湖で溺死させようと企てます。

計画は失敗に終わるものの、ロバータは事故死し、クライドは殺人罪で逮捕されます。裁判では、検察側がクライドを冷酷な殺人者として描き出す一方で、弁護側は偶発的な事故であったと主張します。社会全体がクライドの罪の是非を問う中で、物語は彼の死刑執行という悲劇的な結末を迎えます。

このように、「アメリカの悲劇」は、クライドの上昇と転落を二部構成で描き出すことで、彼の心の葛藤や社会における個人の運命を浮き彫りにしています。