ドッブの価値と分配の諸理論を読む前に
主要な経済思想家の系譜を理解する
ドッブの経済学は、アダム・スミスやデヴィッド・リカードといった古典派経済学、そしてカール・マルクスに代表されるマルクス経済学を批判的に継承した上で構築されています。古典派経済学は、労働価値説に基づき価値の源泉を労働に求め、市場メカニズムによる資源配分と経済成長を重視しました。一方、マルクス経済学は、資本主義社会における搾取の構造を分析し、労働者階級の解放を究極的な目標としています。ドッブは、これらの理論の長所と短所を鋭く指摘し、独自の価値と分配の理論を展開していきます。
資本主義経済の基礎的な仕組みを学ぶ
ドッブは、資本主義経済における生産、分配、消費の過程を分析し、その矛盾や問題点を明らかにしようとします。そのため、資本主義経済における市場メカニズム、競争、利潤追求といった基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。特に、労働力という特別な商品がどのように売買され、利潤が生み出されるのかという点に注目する必要があります。また、資本蓄積、技術革新、経済危機といった資本主義経済の動態的な側面についても理解を深めておくことが望ましいでしょう。
経済学における「価値」と「分配」の概念を整理する
「価値」と「分配」は、経済学の最も根本的な問題意識であり、ドッブの著作の中心的なテーマでもあります。「価値」とは、財やサービスがどれだけ重要であるかを示す尺度であり、「分配」とは、生産された財やサービスがどのように社会の成員に配分されるかを示す概念です。これらの概念は、歴史的に様々な解釈がなされてきました。古典派経済学では、価値は主に生産に投下された労働量によって決定されると考えられていました。一方、近代経済学では、需要と供給の関係によって価格が決定され、価値はその価格によって表現されると考えられています。ドッブは、これらの既存の価値論を批判的に検討し、独自の価値論を展開していきます。
ドッブの時代背景と問題意識を把握する
ドッブは、20世紀前半の激動する時代を生きた経済学者であり、彼の著作は当時の社会状況や歴史的文脈の中で理解する必要があります。特に、ロシア革命後のソ連型社会主義の登場と世界恐慌による資本主義経済の危機は、ドッブの経済思想に大きな影響を与えました。ドッブは、資本主義経済の矛盾や限界を克服し、より平等で公正な社会を実現するための経済体制を模索していました。