ドッブの価値と分配の諸理論の機能
ドッブの価値と分配の諸理論の機能
モーリス・ドッブは、20世紀のイギリスを代表するマルクス経済学者の一人であり、主著『価値と分配の諸理論:一橋大学経済研究所創立20周年記念講演集』の中で、古典派経済学からマルクス経済学、そして現代経済学に至るまでの価値と分配に関する理論の歴史を、独自の視点から批判的に検討しました。
ドッブは、この著作において単なる学説史の記述に留まらず、それぞれの理論が抱える問題点や限界を鋭く指摘し、同時にマルクス経済学の立場から独自の理論構築を試みています。彼の分析は、労働価値説と生産要素分配論の対立を軸に展開され、それぞれの理論が持つ歴史的、社会的背景を明らかにしながら、価値と分配の問題の本質に迫っていきます。
ドッブは、古典派経済学における価値論、特にアダム・スミスやダヴィッド・リカードの労働価値説を高く評価し、その後の経済学が彼らの理論から後退してしまったと批判しました。彼は、マルクスの労働価値説が古典派経済学の正統な後継者であると主張し、資本主義社会における搾取の構造を明らかにするために不可欠な理論であるとしました。
さらに、ドッブは、新古典派経済学が価値を効用や限界概念に還元することによって、社会における階級対立や搾取の問題を覆い隠してしまうと批判しました。彼は、分配問題を生産要素の貢献度に還元する限界生産力説も、現実の資本主義経済における力関係を無視したものであると指摘しています。
ドッブの著作は、マルクス経済学の立場から書かれているものの、その鋭い分析と論理展開は、マルクス経済学以外の立場の人々にも多くの示唆を与え、経済学における価値と分配の問題について改めて深く考えるきっかけを与えました。
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