## ドッブの価値と分配の諸理論の技法
ドッブは、その経済学研究において、特定の技法に厳密に限定するのではなく、むしろ問題に応じて柔軟に手法を選択しました。しかし、彼の著作を貫く一貫した方法論的アプローチを識別することは可能です。以下に、ドッブの主要な技法をいくつか詳しく解説します。
1. 歴史的唯物論
ドッブの経済学の中核を成すのは、マルクスの歴史的唯物論です。この観点から、ドッブは、経済システムを抽象的なモデルとしてではなく、具体的な歴史的発展の産物として捉えました。
ドッブは、生産様式、階級関係、および社会の物質的基盤が、経済現象を理解するための鍵であると主張しました。彼は、経済理論を歴史から切り離すことはできず、むしろ歴史的状況の中で解釈する必要があると考えていました。
2. 批判的分析
ドッブは、既存の経済理論、特に新古典派経済学に対して鋭い批判的分析を行いました。彼は、新古典派経済学が、静的な均衡分析、方法論的個人主義、完全競争などの非現実的な仮定に基づいていると批判しました。
ドッブは、新古典派経済学が、資本主義経済における力関係、不平等、階級闘争といった重要な側面を無視していると主張しました。彼は、経済学は、社会の現実をより適切に反映した、より現実的で歴史的に根拠のあるアプローチを採用する必要があると信じていました。
3. 長期分析
ドッブは、経済現象を理解するためには、長期的な視点が不可欠であると強調しました。彼は、短期的な変動ではなく、長期的な趨勢と構造変化に焦点を当てました。
ドッブは、資本蓄積、技術進歩、人口増加などの要因が、長期的な経済成長と発展にどのように影響するかを分析しました。彼は、経済システムは絶えず進化しており、静的な均衡モデルではそのダイナミズムを捉えることができないと主張しました。
4. 階級分析
ドッブは、マルクスの階級分析を経済学に取り入れました。彼は、資本家階級と労働者階級の間の対立が、資本主義経済の原動力であると主張しました。
ドッブは、利潤、賃金、地代といった分配関係が、階級闘争の結果として決定されると分析しました。彼は、資本主義経済における不平等と搾取の根源を、階級関係に求めました。