## ドッブの価値と分配の諸理論の位置づけ
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ドッブの価値と分配の諸理論
モーリス・ドッブ(Maurice Dobb)は、20世紀のイギリスを代表するマルクス経済学者の一人であり、資本主義の分析や社会主義計画経済の研究で知られています。彼の主著『価値と分配の諸理論に関する覚え書き』(”Political Economy and Capitalism: Some Essays in Economic Tradition”, 1937年。原題を直訳すると「政治経済学と資本主義:経済学の伝統におけるいくつかのエッセイ」)は、古典派経済学からマルクス、そして20世紀初頭までの経済学説史を、価値と分配の問題に焦点を当てて批判的に検討したものです。
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価値論における位置づけ
ドッブは、価値論を巡る論争を、経済学における根本的な対立軸と捉ました。彼は、古典派経済学のアダム・スミスやデヴィッド・リカードが、労働を価値の源泉と捉える「労働価値説」を展開したと解釈しました。そして、この労働価値説は、資本主義社会における搾取の構造を明らかにする上で重要な役割を果たすと評価しました。
一方、ドッブは、限界効用学派のジェヴォンズやメンガー、ワルラスらが提唱した「限界効用理論」を、労働価値説に対する反動として批判的に分析しました。限界効用理論は、財やサービスの価値を、消費者が感じる主観的な満足度(効用)によって説明しようとします。ドッブは、限界効用理論が、資本主義社会における生産関係や階級対立を無視し、個人の消費行動にのみ焦点を当てることで、資本主義の apologetics(擁護論)に陥っていると批判しました。
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分配論における位置づけ
ドッブは、分配論についても、古典派経済学と新古典派経済学の対立構造の中で分析しました。彼は、リカードが、利潤を労働の搾取によって生み出される剰余価値と捉えたことを高く評価しました。そして、マルクスの分配論が、リカードの分析を継承し、発展させたと解釈しました。
ドッブは、新古典派経済学における分配論、特に限界生産力説を、資本主義社会における不平等な分配関係を正当化する理論として批判しました。限界生産力説は、生産要素の投入量をわずかに変化させたときに得られる生産物の増加量(限界生産物)に応じて、賃金や利潤などの要素報酬が決定されると主張します。ドッブは、限界生産力説が、技術的に決定されたものとして分配関係を捉え、階級闘争や権力関係などの社会的要因を軽視していると批判しました。
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ドッブの理論の影響
ドッブの『価値と分配の諸理論に関する覚え書き』は、マルクス経済学の古典的なテキストとして、多くの経済学者に影響を与えました。彼の著作は、価値と分配の問題を巡る歴史的な論争を整理し、マルクス経済学の立場を明確に示したという点で評価されています。
**注釈:** この文章は、ドッブの価値と分配の諸理論の位置づけについて、客観的な情報を中心に解説したものです。推測に基づく情報や結論は含めていません。
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