## ドッブの価値と分配の諸理論に関連する歴史上の事件
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古典派経済学とリカードの価値理論
ドッブは、アダム・スミスやダヴィッド・リカードといった古典派経済学者の労働価値説を高く評価していました。特にリカードの価値理論は、ドッブ自身の価値と分配の理論に大きな影響を与えています。リカードは、商品の価値はそれを生産するために必要な労働量によって決まると主張しました。
ドッブは、リカードの価値理論が資本主義経済における搾取の関係を明らかにする上で重要だと考えていました。資本家は労働者を雇用し、彼らが生産する商品の価値よりも低い賃金を支払うことで利潤を得ているとドッブは主張しました。
### 2.
マルクスの『資本論』と搾取論
ドッブの価値と分配の理論は、カール・マルクスの『資本論』の影響を強く受けています。マルクスもまた、リカードの労働価値説を継承し、資本主義経済における搾取の関係を分析しました。マルクスは、労働者が生産する価値と、彼らが受け取る賃金との差額を「剰余価値」と呼び、これが資本家の利潤の源泉であると主張しました。
ドッブは、マルクスの搾取論を支持し、資本主義経済においては、労働者が常に不当な搾取を受けていると主張しました。彼は、資本主義経済が本質的に不安定なシステムである理由の一つとして、この搾取の関係を挙げました。
### 3.
1930年代の世界恐慌
1930年代の世界恐慌は、資本主義経済の不安定さを如実に示す出来事でした。この経済危機は、大規模な失業、生産の減退、金融市場の混乱など、世界経済に深刻な影響を与えました。
ドッブは、世界恐慌を資本主義経済が内包する矛盾の表れだと考えました。彼は、恐慌の原因を、過剰生産、投資の不足、賃金の低下など、資本主義経済に固有な問題に求めました。ドッブは、世界恐慌が資本主義経済の限界を示すものであり、社会主義への移行が必要であることを示唆していると主張しました。
### 4.
ソ連の計画経済
ドッブは、ソビエト連邦における計画経済の実験に強い関心を抱いていました。彼は、ソ連が資本主義経済の矛盾を克服し、より公正で平等な社会を実現するためのモデルケースになると考えていました。
ドッブは、ソ連の計画経済を擁護し、市場メカニズムに頼らない経済運営の可能性を示したと評価しました。しかし、彼は同時に、ソ連の計画経済が抱える問題点も指摘していました。例えば、官僚主義の弊害、労働者のモチベーションの低下、消費財の不足などです。
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戦後の資本主義経済の安定成長
第二次世界大戦後、資本主義経済は比較的安定した成長を遂げました。この経済成長は、ケインズ経済学に基づく政府の積極的な介入政策、技術革新、国際貿易の拡大などによって支えられました。
戦後の資本主義経済の安定成長は、ドッブの資本主義経済に対する悲観的な見方を覆すものでした。彼は、戦後の資本主義経済の安定成長の要因を分析し、資本主義経済が自己変革能力を持つことを認めました。しかし、彼は依然として、資本主義経済が本質的に不安定なシステムであるという見方を捨てていませんでした。