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ドストエフスキーの罪と罰の比喩表現

ドストエフスキーの罪と罰の比喩表現

ペテルブルクの街並み:圧迫と閉塞感の象徴

ドストエフスキーは、当時のロシア社会が抱える病理を描き出す舞台として、ペテルブルクの街並みを巧みに利用しています。 特にラスコーリニコフが住む貧民街は、うす暗く、汚く、悪臭漂う場所として描写され、登場人物たちの精神状態と呼応しています。狭い路地や息苦しい部屋は、ラスコーリニコフの罪悪感や社会からの疎外感を具現化し、読者に登場人物たちの置かれた状況をより鮮明にイメージさせます。また、街の喧騒や人混みは、ラスコーリニコフの混乱した心理状態を反映し、彼をさらに追い詰めていく様子が描かれています。

血:罪の意識と贖罪の象徴

作中で繰り返し登場する「血」は、ラスコーリニコフの罪の意識と深く結びついています。老婆殺害の場面では、鮮烈な赤い血が彼の視界を覆い尽くし、その後の彼を苦しめる悪夢にも頻繁に現れます。血は、消すことのできない罪の証拠として、ラスコーリニコフの精神を蝕んでいくのです。一方で、血は贖罪の象徴としても描かれています。ソーニャとの出会いを経て、ラスコーリニコフは自首を決意しますが、その際にも彼は自身の血を流すことを選びます。これは、罪を償うためには、自らの血を流すことでしか贖罪できないという、当時のロシア社会における宗教観を反映しているとも言えるでしょう。

黄色:精神的な不安定さと道徳的退廃の象徴

ドストエフスキーは、「黄色」を登場人物たちの精神的な不安定さや道徳的退廃を象徴する色として用いています。ラスコーリニコフが殺害する質屋の老婆の部屋は、黄色を基調とした不快な空間として描写され、彼の犯行当時の精神状態を暗示しています。また、ラスコーリニコフが頻繁に訪れる安酒場や売春宿も、黄色い照明や壁紙で彩られ、当時のロシア社会における道徳的な退廃を象徴しています。このように、「黄色」は、物語全体に不穏な雰囲気を与え、読者に登場人物たちの不安定な心理状態や社会の病理を印象づける役割を果たしています。

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