ドストエフスキーの罪と罰の対極
ヴォルテール「カンdide」における楽天主義と合理主義
「罪と罰」の重苦しいまでの心理描写、道徳的ジレンマ、人間の苦悩といったテーマとは対照的に、ヴォルテールの「カンdide」は、楽天主義と合理主義を風刺的に描いた作品です。主人公カンdideは、師パン gloss pangloss から「あらゆる可能な世界の中で、この世界が最善のものである」という楽観的な哲学を教え込まれ、様々な苦難に遭いながらも、その信念を貫き通そうとします。
「罪と罰」が人間の心の奥底に潜む闇や罪の意識に焦点を当てているのに対し、「カンdide」は、皮肉とユーモアを用いながら、盲目的な楽観主義や、当時の社会における不条理を批判しています。カンdideが経験する冒険は、戦争、宗教裁判、自然災害など、人間の愚かさや残酷さを浮き彫りにする出来事ばかりです。
また、「罪と罰」が長編小説であるのに対し、「カンdide」は比較的短い作品であり、その文体も簡潔で明快です。ドストエフスキーが複雑な心理描写を用いて読者を主人公の内心世界に引き込むのに対し、ヴォルテールは、風刺とユーモア、そしてテンポの速い展開によって、読者を物語の世界に引き込みます。