ドストエフスキーの白夜の関連著作
ナボコフの「賜物」における「白夜」
ウラジーミル・ナボコフのロシア語小説「賜物」は、1930年代のベルリンを舞台に、亡命ロシア人作家フョードル・ゴドゥノフの生活と創作活動を描いています。この作品は、ロシア文学へのオマージュとパロディに満ちており、特にドストエフスキーの影響が色濃く反映されています。
「賜物」の中で、ゴドゥノフはドストエフスキーの長編小説の草稿を発見したという設定で、その内容を「貧乏な人々」や「カラマーゾフの兄弟」と比較しながら論評しています。また、ゴドゥノフ自身が執筆中の伝記の主人公であるチェルヌイシェフスキーも、ドストエフスキーと深い関わりを持つ人物として描かれています。
特に、「白夜」との関連が顕著なのは、ゴドゥノフが創作する詩の断片です。ゴドゥノフの詩は、ペテルブルクの幻想的な白夜を背景に、孤独な夢想家の内面世界を繊細な筆致で描き出しており、「白夜」の主人公の心情と共鳴する部分が多く見られます。
アンドレイ・ベリーの「ペテルブルク」における都市と夢
アンドレイ・ベリーの象徴主義小説「ペテルブルク」は、20世紀初頭のロシア革命前夜を舞台に、帝政ロシアの官僚の息子であるニコライ・アブルレゾフの精神的な彷徨を描いています。この作品は、ペテルブルクという都市を、現実と幻想、理性と狂気が交錯する迷宮として描き出すことで、当時のロシア社会の不安と混迷を象徴的に表現しています。
「ペテルブルク」と「白夜」は、どちらもペテルブルクを舞台とし、幻想的な雰囲気の中で展開されるという共通点があります。「白夜」の主人公が体験する夢のような出来事と、「ペテルブルク」の登場人物たちが迷い込む非現実的な世界は、どちらも都市空間が持つ潜在的な力によって生み出されたものとして解釈することができます。
また、両作品とも、現実と幻想の境界線が曖昧になることで、人間のアイデンティティや存在意義が揺らいでいく様子を描いているという点で共通しています。「白夜」の主人公がナステンカとの出会いと別れを通して自己認識を深めていくように、「ペテルブルク」のニコライもまた、革命の陰謀に巻き込まれていく中で自己の存在意義を見出そうと苦悩します。