ドストエフスキーの白夜と作者
ドストエフスキーの分身たる「夢想家」
「白夜」の主人公は、名前が明かされないまま「夢想家」と呼ばれています。これは、ドストエフスキー自身が若い頃に「ペテルブルク文集」の中で用いた呼び名と同一であり、作者の分身ともいえる存在です。内気で孤独を愛する夢想家は、現実の世界に馴染めず、空想の世界に閉じこもりがちです。この設定は、当時のドストエフスキー自身の境遇や内面と重なる部分が多く見られます。
ペテルブルクという都市の描かれ方
「白夜」の舞台であるペテルブルクは、美しくも冷酷な都市として描かれています。主人公の夢想家は、華やかな街並みや人々の中にあっても、どこか疎外感を感じています。ドストエフスキー自身も、ペテルブルクを愛憎半ばする複雑な感情を抱いていました。彼の作品には、ペテルブルクの光と影、美しさと醜悪さが克明に描写されています。「白夜」におけるペテルブルクの描写は、作者自身の都市に対する複雑な感情を反映していると言えるでしょう。
「愛」と「孤独」のテーマ
「白夜」では、ナスターシャとの束の間の恋愛を通して、主人公の夢想家は「愛」と「孤独」という普遍的なテーマに直面します。ドストエフスキーは、他の多くの作品においても、人間関係における愛と孤独の葛藤を描いてきました。「白夜」は、作者が生涯にわたって探求し続けたこれらのテーマが、短い物語の中で凝縮して描かれている作品と言えるでしょう。