## ドストエフスキーの未成年に影響を与えた本
プーシキンの詩集
ドストエフスキーの長編小説『未成年』には、様々な文学作品からの引用や言及が散りばめられていますが、中でも特に重要な影響を与えているのが、ロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキンの作品群です。 その中でも、プーシキンの詩集は、主人公アルカージイの心情や行動原理を理解する上で欠かせない鍵となっています。
『未成年』には、プーシキンの詩の引用が数多く登場しますが、アルカージイの生き方に最も大きな影響を与えているのが、「人にはそれぞれ、心に秘めた思いがある」という一節で知られる詩『預言者』です。この詩は、預言者として目覚めた男の苦悩と使命感を歌ったものであり、アルカージイは自らをこの預言者に重ね合わせ、社会に対して独自の正義を貫こうとします。
アルカージイは、私生児として生まれ、複雑な家庭環境の中で育ったことから、常に孤独と疎外感を抱えています。彼は、そんな自身の境遇に憤りを感じ、社会の不条理を告発しようと決意します。プーシキンの詩は、そんなアルカージイの心の支えとなり、彼に行動を起こすための勇気を与えていると言えるでしょう。
例えば、アルカージイが父親ヴェルシーロフに対して抱く複雑な感情は、プーシキンの詩を通して描かれています。アルカージイは、ヴェルシーロフの才能や魅力に惹かれながらも、彼の無責任さや軽薄さゆえに苦しめられます。
また、アルカージイが恋心を抱く女性たちとの関係性においても、プーシキンの詩は重要な役割を果たしています。アルカージイは、理想の女性像を追い求めるあまり、現実の女性との関係に苦悩することになります。
このように、『未成年』におけるプーシキンの詩の引用や言及は、単なる文学的な装飾ではなく、アルカージイの心情や行動原理を理解する上で欠かせない要素となっています。プーシキンの作品を通して、ドストエフスキーは、当時のロシア社会における理想と現実の葛藤、人間の持つ矛盾や葛藤といった普遍的なテーマを描き出していると言えるでしょう。