## ドストエフスキーの未成年から学ぶ時代性
###
19世紀ロシア社会の矛盾と不安
ドストエフスキーの『未成年』は、1860年代のロシアを舞台に、激動する社会の中で生きる人々の姿を描いた作品です。当時のロシアは、農奴解放令（1861年）によって社会構造が大きく変化し、資本主義経済が台頭しつつありました。
こうした時代の変化は、人々の価値観や生活様式に大きな影響を与えました。伝統的な身分制度が崩壊し、金銭が支配的な力を持つようになると、人々は精神的な支えを失い、不安や焦燥感に駆られるようになりました。
作中では、主人公アルカジイをはじめとする登場人物たちの多くが、こうした時代の矛盾や不安に翻弄される姿が描かれています。彼らは、新しい時代における自分の居場所を見つけられず、金銭問題や恋愛問題に苦悩し、理想と現実の狭間で葛藤します。
###
金銭への欲望と人間の尊厳
『未成年』では、金銭が重要なテーマとして繰り返し登場します。当時のロシアでは、資本主義経済の浸透に伴い、金銭に対する人々の欲望が肥大化していました。
主人公アルカジイもまた、金銭に執着する一人です。彼は、私生児として生まれ、貧しい境遇に育ったことから、金銭を手に入れることで、自分の存在を認めさせ、幸せを掴もうとします。
しかし、作中では、金銭への欲望が人間の尊厳を歪め、破滅へと導く様子が描かれています。金銭に目がくらんだ登場人物たちは、倫理観や道徳心を失い、詐欺や横領などの犯罪に手を染めていきます。
ドストエフスキーは、『未成年』を通して、金銭万能主義がはびこる社会における人間の弱さや愚かさを鋭く批判しています。彼は、真の幸福は、金銭ではなく、愛や友情、信仰など、精神的な豊かさの中にあると訴えかけています。