ドストエフスキーの地下室の手記と作者
「地下室の手記」における語り手とドストエフスキーの関係
「地下室の手記」は、一人称の語り手である「地下の人」の視点で書かれています。彼は、自分の考えや感情を赤裸々に語る、非常に主観的な語り手です。そのため、語り手の思想や行動が、そのままドストエフスキー自身のそれと一致するとは限りません。
ドストエフスキーの思想・経験と作品との共通点
しかし、「地下室の手記」には、ドストエフスキー自身の思想や経験と共通する点がいくつか見られます。例えば、人間の自由意志や理性に対する懐疑、西欧思想への批判、罪と罰、疎外感などといったテーマは、ドストエフスキーの他の作品にも共通して見られるものです。
作品における作者の存在
「地下室の手記」は、ドストエフスキーがシベリア流刑から帰還した後、新しいタイプの文学を生み出そうと模索していた時期に書かれました。そのため、この作品には、従来のリアリズム小説の枠組みを超え、人間の深層心理を鋭く描き出そうとする、ドストエフスキーの新たな文学的試みが表れていると言えるでしょう。