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ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟の思想的背景

## ドストエフスキーのカラマーゾフの兄弟の思想的背景

19世紀ロシアの思想的混乱

「カラマーゾフの兄弟」が執筆された19世紀後半のロシアは、西欧化とスラヴ主義、無神論と宗教復興など、様々な思想が激しく対立する時代でした。農奴解放令(1861年)後の社会不安、資本主義の台頭による貧富の格差拡大、そして伝統的な価値観の崩壊が進行し、人々の間には将来への不安と閉塞感が漂っていました。

ドストエフスキー自身の思想的遍歴

ドストエフスキー自身、若年期には社会主義思想に傾倒し、秘密結社に参加したことで逮捕、死刑判決を受けるという経験をしました。その後、シベリア流刑を経て信仰に目覚め、以後、宗教的・倫理的な問題意識を深めていきます。「カラマーゾフの兄弟」には、こうしたドストエフスキー自身の思想的遍歴が色濃く反映されています。

理性主義と信仰の対立

作中では、理性と合理性を重視するイワンと、信仰と神への帰依を説くアリョーシャという対照的な兄弟が描かれます。イワンは、神が存在しないなら「すべては許される」という過激な思想に至り、その結果、父殺しという悲劇を招く一因となります。一方、アリョーシャは、ゾシマ長老の教えの下で信仰と愛の大切さを学び、苦悩する人々を救済しようとします。

実存主義の先駆

「カラマーゾフの兄弟」は、20世紀の実存主義を予見する作品としても知られています。登場人物たちは、自由意志と運命、罪と罰、存在の absurdity といった根源的な問題に直面し、苦悩しながらも自らの人生を選択していきます。特に、イワンの「すべては許される」というテーゼは、後のサルトルやカミュらの実存主義思想に大きな影響を与えました。

様々な思想の影響

ドストエフスキーは、当時のロシア思想界で論争を巻き起こしていた様々な思想を作品に取り込んでいます。例えば、チェルヌイシェフスキーの合理主義、ピサレフの唯物論、バクーニンの無政府主義、そしてキリスト教思想などが挙げられます。

「カラマーゾフの兄弟」は、こうした多様な思想を背景に、人間の心の奥底を鋭くえぐり出すことで、時代を超えて読み継がれる普遍的なテーマを描き出した作品と言えるでしょう。

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