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ドストエフスキーの『賭博者』の思想的背景

## ドストエフスキーの『賭博者』の思想的背景

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ドストエフスキー自身の賭博体験

ドストエフスキー自身、ルーレットにのめり込んだ経験があり、『賭博者』はその体験を色濃く反映した作品です。彼は1862年から翌年にかけてヨーロッパを旅行中、カジノでルーレットに熱中し、深刻な経済的困窮に陥りました。この時の経験は彼に大きな精神的衝撃を与え、『賭博者』の執筆の直接的な動機となりました。

作中の主人公アレクセイ・イワノビッチの狂おしいほどの賭博への執着や、負けが込むほどに冷静さを失い、一攫千金を夢見る姿は、ドストエフスキー自身の姿と重なります。

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19世紀ロシア社会における賭博の広がり

『賭博者』が執筆された19世紀ロシアでは、貴族階級を中心に賭博が広く浸透していました。賭博は社交の場として、また退屈な日常からの逃避として、多くの人々を魅了しました。しかし同時に、賭博による経済的な破綻や、人生の破滅も後を絶ちませんでした。

ドストエフスキーは、自身の体験を通して、賭博が持つ魔力と恐ろしさを誰よりも深く理解していました。『賭博者』は、当時のロシア社会に蔓延していた賭博熱を背景に、人間の弱さや欲望の恐ろしさを鋭く描き出しています。

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当時のロシアにおける西欧思想の影響

19世紀のロシアは、西欧思想の影響を強く受けた時代でした。合理的思考や個人主義といった西欧的な価値観が流入する一方で、伝統的なロシアの価値観との間で葛藤が生じていました。

『賭博者』の登場人物たちは、こうした価値観の対立に翻弄される様子が描かれています。主人公アレクセイは、西欧的な教養を身につけたインテリですが、賭博への衝動を抑えきれず、自らを破滅へと導いていきます。

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ドストエフスキーの思想:自由意志と罪の意識

ドストエフスキーは、人間の自由意志と、それに伴う罪の意識というテーマを生涯にわたって探求し続けました。『賭博者』においても、主人公アレクセイは、自らの意志で賭博にのめり込んでいく一方で、その行為に罪悪感を抱き続けています。

ドストエフスキーは、人間は自由意志を持つがゆえに、誤った選択をしてしまう弱さを持っていると考えたのでしょう。『賭博者』は、人間の自由意志と罪の意識という、ドストエフスキーの根源的なテーマが色濃く反映された作品といえます。

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