## ドストエフスキーの『白夜』と言語
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登場人物の孤独と疎外を描く言語
『白夜』では、登場人物たちの孤独や疎外感が繊細な筆致で描かれています。特に、語り手である「私」のモノローグは、彼の内面世界を如実に表しており、現実世界との断絶が浮き彫りになっています。
「私」は、サンクトペテルブルクの街を彷徨い歩く中で、孤独感を募らせていきます。彼のモノローグは、文末に「…だ」といった断定を避ける傾向があり、自己完結せず、誰かと繋がりたいという欲求を暗に示しています。また、反復表現や擬声語、擬態語を多用することで、彼の不安定な精神状態や孤独感を読者に強く印象づけています。
例えば、「…そしてまた一人ぼっちになったのだ、またしても全くの一人ぼっちになったのだ!」という一文は、「一人ぼっち」という表現の反復によって、「私」の孤独感が強調されています。
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夢と現実の境界線を曖昧にする表現
『白夜』では、夢と現実の境界線が曖昧になるような描写が随所に見られます。これは、白夜という特殊な設定とも相まって、幻想的な雰囲気を醸し出すとともに、「私」の不安定な精神状態を象徴しているとも言えます。
例えば、「私」がナステンカと出会う場面では、夕暮れの薄明かりの中で、彼女の姿がぼんやりと浮かび上がる様子が描かれています。また、「私」は、ナステンカとの再会を夢見ていましたが、それが現実になったのか、それとも夢だったのか、読者には判別がつきません。
このように、夢と現実が交錯するような描写によって、読者は「私」の心情に寄り添い、彼の揺れ動く内面世界を追体験することになります。