ドゥオーキンの権利論の位置づけ
ドゥオーキンと権利論
ロナルド・ドゥオーキンは、現代英米法哲学を代表する法哲学者であり、その広範な著作の中で、法と道徳、裁判における司法の役割、自由と平等といった問題について考察を深めてきました。特に、彼の権利論は、法哲学のみならず、政治哲学や倫理学の分野においても大きな影響を与えてきました。ドゥオーキンの権利論は、彼の法哲学の中核をなすものであり、彼の法理論全体を理解する上で欠かせないものです。
権利を「切り札」と捉える
ドゥオーキンの権利論の特徴は、個人の権利を「切り札」と捉える点にあります。これは、個人が自身の権利を主張することによって、たとえそれが社会全体の利益に反していたとしても、国家の介入を退けることができるという考え方です。ドゥオーキンは、個人の権利を国家の介入から守る「盾」として捉えるだけでなく、積極的に国家に対して何かを要求する「剣」としての側面も強調しています。
権利の根拠
ドゥオーキンは、権利の根拠を人間の尊厳や自律性といった道徳的価値に求めています。彼は、人間はそれぞれ固有の価値を持ち、自己決定権に基づいて自らの人生を選択する権利を持つと主張します。そして、この自己決定権を保障するために、個人の権利は国家によって尊重されなければならないと論じます。
権利の体系
ドゥオーキンは、権利を単なる個別の権利の寄せ集めとして捉えるのではなく、相互に関連し合い、体系的な整合性を保ったものとして理解しています。彼は、個々の権利は、より上位の抽象的な権利原理から導き出されるものと考えています。例えば、表現の自由は、より上位の自己決定権という原理から導き出される具体的な権利の一つとみなされます。
批判と影響
ドゥオーキンの権利論は、その影響力の大きさゆえに、多くの批判も受けてきました。例えば、権利を「切り札」と捉えることに対しては、社会全体の利益を軽視しているという批判があります。また、権利の根拠を道徳的価値に求めることに対しては、道徳的価値は時代や文化によって異なるため、権利の普遍性を担保できないという批判もあります。
これらの批判にもかかわらず、ドゥオーキンの権利論は、現代の権利論を語る上で欠かせないものとなっています.
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