## ドゥオーキンの権利論の世界
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権利とは何か
ロナルド・ドゥオーキンは、現代の法哲学における最も重要な思想家の一人であり、その中心的なテーマは「権利」です。ドゥオーキンにとって、権利とは、個人が国家に対して一定の行動を要求することを正当化する「切り札」です。これは、たとえ社会全体の利益のためであっても、個人の権利を侵害することは正当化されないということを意味します。
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権利の根拠
では、このような強い権利は一体どこに根拠を持つのでしょうか。ドゥオーキンは、個人の権利は、人間の尊厳と平等という根本的な価値に根拠を持つと主張します。人間は、単なる手段ではなく、それ自体として目的であり、それぞれが等しく尊厳と尊重を受ける資格があります。そして、この尊厳と尊重を保障するために、個々の人間には一定の権利が不可侵のものとして認められなければならないのです。
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権利と功利主義の対立
ドゥオーキンの権利論は、功利主義に対する批判として展開されました。功利主義は、「最大多数の最大幸福」を道徳の基準とする考え方であり、個人の権利は、社会全体の幸福を最大化するために制限される可能性があります。しかし、ドゥオーキンは、このような考え方は、個人の尊厳と平等を軽視するものであり、許されるものではないと批判します。たとえ、社会全体の幸福を最大化するためであっても、個人の権利を侵害することは正当化されないのです。
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法の解釈における権利
ドゥオーキンは、権利論を法の解釈にも適用しています。彼は、裁判官は、単に法律の条文を機械的に適用するのではなく、その背後にある道徳的原則、特に個人の権利を考慮して判断を下すべきだと主張します。ドゥオーキンによれば、法は、単なる規則の集合体ではなく、道徳的原則を含んだ「解釈の対象」なのです。そして、裁判官は、この解釈作業を通じて、個人の権利を最大限に保障するような判断を下すことが求められます。
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ドゥオーキンの権利論の影響
ドゥオーキンの権利論は、現代の法哲学、政治哲学に多大な影響を与え、現在もなお活発な議論の対象となっています。彼の思想は、個人の権利の重要性を改めて認識させるとともに、法の解釈における道徳的次元を明らかにした点で、高く評価されています。