ドゥオーキンの権利論
ドゥオーキンはどのような権利論を展開したのか
アメリカの哲学者・法哲学者ロナルド・ドゥオーキン(1931-2013)は、現代のリベラリズムを代表する思想家の一人であり、法と政治に関する精緻な議論を展開しました。 特に、彼の権利論は、自由主義と共同体主義の対立が深まる中で、個人の権利の重要性を擁護する論拠として注目されています。
「権利としての切り札」とは何か
ドゥオーキンの権利論の中心概念が「権利としての切り札」(trump card as a right)です。これは、個人の権利が、他の政治的価値、例えば公益や共同体の利益よりも優先されるべきことを意味します。ドゥオーキンは、個人の権利を「切り札」と表現することで、その強固な性格を強調しています。 彼によれば、個人が持つ権利は、たとえそれが社会全体の利益に反する場合でも、尊重されなければならないのです。
ドゥオーキンの権利論は、他の権利論とどう違うのか
ドゥオーキンの権利論は、他の権利論、特に功利主義的な権利論と対比すると、その特徴が際立ちます。功利主義は、社会全体の幸福の最大化を至上命題とするため、個人の権利は、公益に貢献する限りにおいてのみ認められることになります。
一方、ドゥオーキンは、個人の権利を、公益に基づいてinstrumentalに捉えるのではなく、それ自体intrinsicな価値を持つものとして擁護します。ドゥオーキンは、個人の権利を、個人の尊厳や自律性を実現するために不可欠な要素と捉え、たとえそれが社会全体の利益に反する場合でも、尊重されるべきだと主張するのです。
ドゥオーキンの権利論は、どのような影響を与えたのか
ドゥオーキンの権利論は、現代のリベラリズムの思想に大きな影響を与え、法哲学、政治哲学、倫理学など、幅広い分野で議論の対象となっています。特に、彼の「権利としての切り札」の概念は、個人の権利の重要性を再認識させ、自由主義の基礎を強化する役割を果たしました。