## ドイルのバスカヴィル家の犬の発想
アーサー・コナン・ドイルの創作ノートや書簡、彼自身の発言などから、シャーロック・ホームズシリーズの中でも特に人気の高い「バスカヴィル家の犬」の発想源について、確実に分かっている情報を以下に詳しく解説します。
### 伝承と伝説
ドイルは「バスカヴィル家の犬」の着想源として、イギリスに古くから伝わる様々な伝承や伝説から影響を受けていることを認めています。
* **ブラック・ドッグ:** イギリス各地に伝わる、巨大な黒い犬の伝説。多くは死の前兆とされ、不吉なものとして恐れられています。
* **リチャード・キャベル:** 17世紀に実在したとされる、デヴォンシャーに住んでいた人物。悪名高い人物であり、死後、地獄の猟犬に追われるという伝説が残されています。
### ドーンシャーの旅行とフレッチャー・ロビンソンの影響
1901年、ドイルは友人でジャーナリストのバートラム・フレッチャー・ロビンソンと共に、イギリス南西部のデヴォンシャーにあるダートムアを旅行しました。
* **ダートムア:** 荒涼とした風景が広がる広大な湿原。古くから様々な伝説や怪奇譚の舞台とされてきました。
* **フレッチャー・ロビンソンの影響:** ロビンソンはダートムアの伝承に詳しく、ドイルに多くの話を聞かせたとされています。「バスカヴィル家の犬」のストーリーには、ロビンソンが語った伝承が色濃く反映されていると言われています。
### その他の要素
* **ニューゲート監獄:** ドイルは「バスカヴィル家の犬」の執筆前に、ロンドンにあった悪名高い監獄を訪れています。この時の経験が、作中に登場する監獄の描写に影響を与えた可能性があります。
* **当時の社会情勢:** 19世紀末から20世紀初頭にかけてのイギリスは、産業革命の進展による社会構造の変化や、科学技術の発展に伴う合理主義の台頭など、大きな変革期を迎えていました。このような時代の雰囲気も、「バスカヴィル家の犬」の世界観に影響を与えていると考えられます。