トルストイの戦争と平和の発想
トルストイの構想と時代背景
1863年、トルストイは妻ソフィヤに宛てた手紙の中で、1856年の出来事を題材とした小説を構想していると明かしています。これは、ニコライ1世の死後、ロシア社会に広がった改革の機運と、それに伴う貴族階級の動揺を描写する歴史小説となる予定でした。
デカブリストの乱の影響
トルストイは、1825年に起きたデカブリストの乱とその後の弾圧に強い関心を抱いていました。この乱は、自由主義的な貴族たちによって企てられたもので、ロシア社会に大きな衝撃を与えました。トルストイは、この歴史的な出来事を背景に、個人の自由意志と歴史の必然性というテーマを探求しようとしたと考えられます。
ナポレオン戦争の描写
1812年のナポレオン戦争は、ロシア国民にとって重要な歴史的出来事であり、トルストイはこの戦争を背景に、ロシア人の精神性と愛国心を描き出そうとしました。戦争の描写は、歴史書や回顧録などを綿密に調査した上で、リアリティを追求した壮大なものとなっています。
家族と社会の描写
トルストイは、「戦争と平和」の中で、複数の貴族家族の運命を交錯させながら、当時のロシア社会を描き出しています。恋愛、結婚、家族関係、社会的地位など、様々なテーマを通して、人間存在の本質に迫ろうとするトルストイの思想が反映されています。