## トルストイの戦争と平和の思考の枠組み
歴史観
トルストイは歴史における個人の役割、特にナポレオンのような英雄的人物の役割を否定し、歴史は個人の意志ではなく、無数の要素が複雑に絡み合った結果として動くと考えました。彼はこれを「群衆の意志」と呼び、「戦争と平和」では、ナポレオンもまた時代の流れに翻弄された一人として描かれています。
歴史を動かす力は、一人ひとりの人間には制御できない大きな流れであり、人々は知らず知らずのうちにその流れに飲み込まれていく。トルストイは、歴史は英雄や指導者によって作られるのではなく、民衆の集合的な意志によって形作られると考えたのです。
人生観
トルストイは、人生の意味は幸福の追求ではなく、自己犠牲と愛の実践にあると考えました。彼は、人生の真の価値は、社会や他者のために尽くすこと、愛と信仰に基づいた道徳的な生き方をすることにあると説いています。
「戦争と平和」では、さまざまな登場人物が人生の意義を模索する姿が描かれています。ピエールは、享楽的な生活や社会的地位に満足できず、精神的な探求を続けます。アンドレイは、戦場での栄光を求めますが、死の淵で人生の虚しさを実感します。彼らを通して、トルストイは真の幸福は自己を超越したところにあると示唆しています。
家族
トルストイは家族を社会の最小単位、人間関係の基礎として重視しました。彼は、家族という温かな共同体の中でこそ、人は真の愛と幸福を見出すことができると考えました。
「戦争と平和」では、ロストフ家を中心に、家族の絆の強さ、愛と支え合いの大切さが描かれています。戦争や社会の混乱の中で、家族は登場人物たちにとって心の拠り所となります。トルストイは、家族こそが人間にとって最も重要なものであることを訴えかけています。