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トルストイの戦争と平和の思想的背景

## トルストイの戦争と平和の思想的背景

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1. 歴史観

トルストイは当時の主流であったヘーゲル的な歴史観、すなわち歴史は理性や理念に基づき進歩するという考え方を否定していました。彼は、歴史は個人の自由意志や無数の偶然の積み重ねによって形成されるものであり、そこに必然性や合理性を見出すことはできないと考えていました。

「戦争と平和」では、ナポレオンのような英雄でさえ歴史の流れを変えることはできず、歴史は個人の思惑を超えたところで動いているという考え方が描かれています。これは、トルストイ自身の歴史観を反映したものであると同時に、当時のロシア社会に蔓延していた英雄主義や国家主義へのアンチテーゼでもありました。

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2. 民衆思想

トルストイは、歴史を動かす真の力は民衆であると信じていました。彼は、民衆の中にこそ、自然と調和した素朴な生活、道徳、信仰が存在すると考えており、当時の貴族社会の腐敗や堕落を厳しく批判していました。

「戦争と平和」では、フランス軍の侵攻に際して、ロシアの農民たちが自発的に立ち上がり、祖国を守るために戦う姿が描かれています。これは、民衆の力強さ、愛国心、そして歴史における役割の大きさを示すものとして、トルストイ自身の思想を色濃く反映しています。

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3. キリスト教的人道主義

晩年のトルストイは、独自のキリスト教的人道主義を展開し、その思想は「戦争と平和」にも大きな影響を与えています。彼は、愛、非暴力、精神的な自己完成を説き、戦争や暴力行為を否定しました。

「戦争と平和」では、主人公ピエールが戦争の悲惨さを経験する中で、精神的な苦悩を経て、最終的には愛と赦しの重要性に気づくという描写があります。これは、トルストイ自身の思想的な葛藤と、彼が到達したキリスト教的人道主義に基づく平和主義を反映していると言えます。

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