## トルストイの戦争と平和からの学び
###
人生の真実とは何か？
トルストイは「戦争と平和」の中で、人生における真実の探求というテーマを繰り返し取り上げています。作中の登場人物たちは、社会的地位、恋愛、家族、死など、人生における様々な局面において葛藤し、自らの価値観と向き合いながら真実を見出そうと苦悩します。
例えば、ピエールは裕福な貴族の私生児として生まれながらも、人生の意義を見出せず、フリーメーソンに傾倒したり、ナターシャとの結婚と別れを通じて精神的に成長していきます。アンドレイ公爵は、栄光を求めてナポレオンに心酔しますが、戦場での経験やナターシャとの出会いを通して、真の幸福は名声や権力ではなく、愛や家族にあることに気づきます。
トルストイは、登場人物たちの内面を深く掘り下げることで、人生における真実というものは一つではなく、時代や環境、個人の経験によって変化するものであることを示唆しています。また、真実は外側ではなく、自らの内面に存在し、それを発見するためには、絶え間ない自己探求と内省が必要であることを訴えかけています。
###
歴史を動かす力は何か？
「戦争と平和」は、ナポレオン戦争を背景に、ロシア貴族社会の栄華と衰退を描いた壮大な歴史小説です。トルストイは、歴史を動かす力は英雄や指導者ではなく、民衆一人ひとりの意志の総体であるという「歴史の法則」を提唱しました。
ナポレオンを英雄視していたアンドレイ公爵は、アウステルリッツの戦いで負傷し、戦場を這いつくばる中で、ナポレオンの姿を間近に見ながらも、かつての憧憬を失います。そして、歴史は英雄によってではなく、民衆の目に見えない力によって動かされていることに気づきます。
ボロジノの戦いでは、クトゥーゾフ将軍は、ナポレオンの軍事的才能を認めながらも、ロシアの勝利は、兵士一人ひとりの祖国を守るという強い意志によって導かれると信じていました。そして、クトゥーゾフの予測通り、フランス軍はロシアの冬の寒さと民衆の抵抗の前に敗退していきます。
トルストイは、歴史は英雄や指導者によってではなく、民衆一人ひとりの意志の総体によって形作られるものであり、個人の自由意志は歴史の流れに飲み込まれるものではなく、歴史を動かす力になり得ると主張しています。