## トルストイの復活の批評
批評家たちの反応
トルストイの「復活」は、1899年の出版当時から、文壇や社会に大きな反響を呼びました。その評価は賞賛と批判が入り混じり、今日に至るまで様々な議論が交わされています。
道徳的・宗教的なテーマへの評価
トルストイの宗教的・道徳的な主張は、多くの批評家たちの注目を集めました。一部の批評家は、本作をキリスト教の教えに基づいた、人間の罪と贖罪、愛と赦しの物語として高く評価しました。特に、主人公ネフリュードフ公爵の精神的な変容と、ヒロインであるカチューシャ・マースロワへの献身的な愛は、人間の魂の救済の可能性を示すものとして、多くの読者に感動を与えました。
一方で、トルストイの宗教観や社会批判があまりにも強く押し付けがましいと感じる読者も少なくありませんでした。特に、当時のロシア正教会からは、トルストイの教義解釈が異端であるとして、激しい非難を浴びることになりました。
文学的技巧に対する評価
「復活」は、トルストイの円熟期の作品として、その文学的技巧の高さも高く評価されています。リアリズムの手法を駆使して、当時のロシア社会の矛盾や人間の心理を克明に描き出している点、登場人物たちの心理描写の巧みさ、そして物語の構成力などが挙げられます。
社会批判
「復活」は、19世紀後半のロシア社会における司法制度の腐敗、貧富の格差、農奴解放後の農民の窮状など、様々な社会問題を告発した作品としても注目されました。トルストイは、自身の社会改革思想を作品に反映させ、読者に問題提起を投げかけています。
ヒロイン像に対する評価
ヒロインであるカチューシャ・マースロワは、社会の犠牲となりながらも、その中で懸命に生きようとする女性として描かれています。その姿は、多くの読者の同情を誘い、共感を呼びました。
一方で、カチューシャの性格描写や行動については、批判的な意見も存在します。特に、ネフリュードフ公爵からの求婚を拒否する場面などは、読者によって解釈が分かれるところです。