トルストイの復活に影響を与えた本
ヴィクトル・ユーゴー著 『レ・ミゼラブル』
トルストイの傑作『復活』は、罪と贖罪、社会的矛盾、精神的な再生といった深遠なテーマを探求する感動的な物語です。この作品に深い影響を与えた作品の一つとして、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの代表作『レ・ミゼラブル』が挙げられます。
『レ・ミゼラブル』は、19世紀のフランス社会を舞台に、パンを盗んだ罪で19年間も監獄生活を送ったジャン・バルジャンという男の波乱に満ちた人生を描いています。彼は仮出獄後も社会から疎外され、絶望の淵に立たされますが、慈悲深い司教との出会いによって改心し、別人として生きようと決意します。しかし、過去の罪は彼を執拗に追いかけ、彼の人生を翻弄していくことになります。
『復活』の主人公ネフリュードフ公爵は、自身の過去の過ちによって苦悩する貴族の青年です。彼はかつて、使用人の少女カチューシャを誘惑し、彼女の人生を狂わせてしまいました。数年後、陪審員として裁判所に出廷したネフリュードフは、被告人席にいるカチューシャと再会します。彼女は堕落した娼婦となっていました。自分の行いによって彼女を不幸に突き落としてしまったという罪悪感に苛まれたネフリュードフは、彼女を救済しようと決意し、自身の贖罪を求めて苦悩します。
『レ・ミゼラブル』と『復活』は、ジャン・バルジャンとネフリュードフという二人の主人公の姿を通して、人間の罪深さと同時に、慈悲や愛によって人は再生できるという希望を描いている点が共通しています。
ユーゴーは『レ・ミゼラブル』の中で、当時のフランス社会に蔓延する貧困、不平等、社会的不正義を克明に描写し、人間の尊厳を踏みにじる社会システムを厳しく批判しています。トルストイもまた、『復活』の中で、帝政ロシアの腐敗した官僚主義や司法制度、貧富の格差などを鋭く批判し、当時のロシア社会が抱える問題点を浮き彫りにしています。
ユーゴーとトルストイは、人間に対する深い洞察力と社会に対する鋭い批判精神を持った作家でした。彼らの代表作である『レ・ミゼラブル』と『復活』は、19世紀の社会状況を反映した作品であると同時に、時代を超えて読み継がれる普遍的なテーマを内包しています。