## トルストイの復活と時間
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時間の流れと登場人物の変化
「復活」では、ネフリュードフ公爵とカチューシャ・マースロワの再会から物語が始まります。二人の関係は過去に遡り、公爵家の親戚として少女時代を過ごしたカチューシャと、青年時代のネフリュードフが関係を持ちます。この時のネフリュードフは純粋で正義感に溢れた青年であり、カチューシャもまた無垢で明るい娘でした。
しかし、二人の関係は長くは続きません。軍隊に入隊するため、ネフリュードフはカチューシャのもとを去り、その間にカチューシャは身ごもり、その後不幸な運命を辿ることになります。一方、ネフリュードフは貴族社会で享楽的な生活を送り、過去の罪を忘れ去ってしまいます。
月日は流れ、陪審員として裁判所を訪れたネフリュードフは、被告人席にいるカチューシャの姿を目にします。彼女は売春容疑をかけられており、変わり果てた姿になっていました。この再会をきっかけに、ネフリュードフは過去の罪と向き合い、自らの生活や価値観を問い直すようになります。
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時間による贖罪の不可能性と精神的な復活
ネフリュードフはカチューシャに対する贖罪を望みますが、過去に戻り、彼女の人生をやり直させることはできません。彼が犯した罪は、時間によって消し去ることができない傷跡をカチューシャに残しました。
ネフリュードフはカチューシャに結婚を申し込むなど、彼女の力になろうとしますが、カチューシャは彼の申し出を受け入れません。彼女はネフリュードフの善意や愛情を理解しつつも、過去の出来事によって傷ついた心を完全に癒やすことはできませんでした。
「復活」は、時間という不可逆的な流れの中で、人間がどのように罪と向き合い、再生していくのかを描いています。ネフリュードフはカチューシャを救うことはできませんでしたが、自らの内面と向き合い、新しい生き方を見出すことで、精神的な「復活」を遂げていきます.