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トルストイのセヴァストーポリ物語を読む

## トルストイのセヴァストーポリ物語を読む

セヴァストーポリ物語とは

「セヴァストーポリ物語」は、ロシアの文豪レフ・トルストイが、自身の従軍経験に基づいて執筆した、全3章から成る連作短編集です。

執筆の背景と出版

1853年から1856年にかけて行われたクリミア戦争において、トルストイはロシア軍の砲兵将校としてセヴァストーポリの防衛戦に参加しました。この時の経験は、後のトルストイの作家活動、思想に大きな影響を与えました。彼は戦場で目の当たりにした戦争の現実、人間の生の姿をありのままに描き出すことで、戦争の虚妄さを訴えようとしました。「セヴァストーポリ物語」は、まさにその試みの最初の成果と言えます。

第1章「12月」は1855年、第2章「5月」は1855年、第3章「8月」は1856年に、それぞれ雑誌「現代人」に発表されました。

各章の概要

各章は、それぞれ異なる視点人物を主人公に、1854年から1855年にかけてのセヴァストーポリ包囲戦を描写しています。

* **第1章「12月」**: 負傷した将校の兄を尋ねて、モスクワからセヴァストーポリを訪れた青年貴族ドミートリイの視点から、戦場の現実と、そこで生きる人々の姿が描かれます。
* **第2章「5月」**: セヴァストーポリで戦うことになった若い砲兵将校の視点から、戦争の日常と、兵士たちの心理が克明に描写されます。
* **第3章「8月」**: 第1章に登場したドミートリイの兄セルゲイを視点人物に、セヴァストーポリ陥落直前の攻防戦が描かれます。

作品の特色

「セヴァストーポリ物語」は、従来の戦争文学の通念を覆す、革新的な作品として高く評価されています。戦闘シーンの描写よりも、戦場における人々の心理や行動に焦点を当てている点、英雄的な行為よりも、むしろ戦争の不条理さや兵士たちの苦悩を描写している点などが、その特徴として挙げられます。

リアリズムの表現

トルストイは「セヴァストーポリ物語」において、徹底したリアリズムを追求しています。戦場の生々しい描写、兵士たちの率直な会話、そして死の影が常に付きまとう状況など、戦争の現実が赤裸々に描かれています。

戦争観

トルストイは「セヴァストーポリ物語」を通して、戦争に対する明確な批判を展開しているわけではありません。 しかし、戦争の現実をありのままに描くことによって、読者に戦争の愚かさ、虚しさを突きつけます。

影響

「セヴァストーポリ物語」は、当時のロシア文学界に大きな衝撃を与え、後の戦争文学に多大な影響を与えました。トルストイ自身にとっても、戦争と人間の真実を追求する、その後の作家活動の原点となった作品と言えます。

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