トルストイのクロイツェル・ソナタを面白く読む方法
トルストイの分身、ポズドヌイシェフになりきって読む
「クロイツェル・ソナタ」は、妻を殺害したポズドヌイシェフの独白という特異な形式で書かれています。彼の語る言葉は、嫉妬や怒り、後悔、そして自己嫌悪に満ちています。読者は、ポズドヌイシェフの歪んだフィルターを通して語られる物語を、批判的な視点で読み解いていく必要があります。
彼になりきって読むことで、彼の言葉の裏に隠された感情や心理を読み解くことができます。例えば、彼が妻の音楽仲間であるヴァイオリニストに激しい嫉妬心を燃やす場面では、彼の歪んだ所有欲や支配欲が見えてきます。同時に、彼の言葉は、当時の社会における男女の不平等や結婚制度の問題点も浮き彫りにしています。
登場人物たちの心理戦に注目する
「クロイツェル・ソナタ」は、登場人物たちの間で繰り広げられる静かな心理戦が読みどころの一つです。特に、ポズドヌイシェフと妻の関係は、言葉の裏に隠された感情や思惑を読み解くことで、より深く理解することができます。
例えば、夫婦が一緒にベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」を演奏する場面では、音楽を通して二人の感情が激しくぶつかり合います。表面上は美しい音楽を奏でながらも、彼らの心は疑念や不信感で満たされていきます。
トルストイの思想を理解する
「クロイツェル・ソナタ」は、トルストイ自身の結婚生活や恋愛観、そして宗教的な思想が色濃く反映された作品です。彼は、この作品を通して、当時の社会における結婚のあり方や男女の関係、さらには人間の性そのものについて、鋭い批判を投げかけています。
作品を読み解く上で、トルストイの思想背景を知ることは非常に重要です。彼の思想は、「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」といった他の作品にも共通するテーマが多く見られます。トルストイの思想を理解することで、「クロイツェル・ソナタ」が持つ普遍的なメッセージを受け取ることができるでしょう。
音楽を聴きながら作品世界に浸る
「クロイツェル・ソナタ」のタイトルにもなっている、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第9番「クロイツェル・ソナタ」は、作品全体を象徴する重要なモチーフとなっています。実際にこの曲を聴きながら作品を読むことで、登場人物たちの感情や情景がより鮮やかに浮かび上がってきます。
ベートーヴェンの情熱的な旋律は、ポズドヌイシェフの心の葛藤や夫婦の愛憎劇と共鳴し、作品世界をより深く理解させてくれるでしょう。