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トルストイのアンナ・カレーニナに影響を与えた本

トルストイのアンナ・カレーニナに影響を与えた本

プーシキンのスペードの女王

トルストイの『アンナ・カレーニナ』に影響を与えた作品として、数多くの文芸作品が挙げられますが、中でもプーシキンの『スペードの女王』は、そのテーマ性、構成、そして登場人物造形において、トルストイに深い影響を与えた作品と言えるでしょう。

『スペードの女王』は、賭博にのめり込み、破滅へと突き進んでいく若き主人公ヘルマンの姿を描いた短編小説です。ヘルマンは、ある伯爵夫人が、三枚のカードの組み合わせを知ることで、必ず賭けに勝てると言う噂を耳にします。富と名声に取り憑かれたヘルマンは、伯爵夫人に近づき、三枚のカードの秘密を聞き出そうとしますが、拒絶された末に、伯爵夫人を死に至らしめてしまいます。その後、ヘルマンは狂気に陥り、自ら命を絶つ結末を迎えます。

『アンナ・カレーニナ』と『スペードの女王』の共通点は、まず第一に、両作品が、当時のロシア社会における、愛、欲望、そして社会規範の間で揺れ動く人間心理を鋭く描いている点にあります。ヘルマンの賭博への執着は、アンナのヴロンスキーへの激しい恋情と重なり合い、両者とも、自らの欲望に突き動かされ、破滅へと向かっていく姿は、読者に強烈な印象を残します。

また、プーシキンは、『スペードの女王』において、登場人物の心理描写を巧みに用い、物語に緊張感と奥行きを与えています。特に、ヘルマンが伯爵夫人に迫る場面や、賭博に興じる場面での心理描写は、読者を主人公の狂気の世界へと引き込みます。トルストイは、プーシキンの心理描写の手法を学び、『アンナ・カレーニナ』において、アンナやヴロンスキー、カレーニンの心の葛藤を、より深く、より繊細に描き出すことに成功しました。

さらに、『スペードの女王』は、短編小説でありながら、その構成の巧みさにおいても高く評価されています。物語は、ヘルマンが伯爵夫人の秘密を知ろうとする場面から始まり、賭博、そして破滅へと、テンポ良く展開していきます。トルストイは、『アンナ・カレーニナ』において、プーシキンの構成力を参考に、複数の登場人物の視点から物語を描き出すという手法を用い、複雑な人間関係や社会構造を浮き彫りにすることに成功しました。

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