## トゥエインのハックルベリー・フィンの冒険から学ぶ時代性
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アメリカ南部の現実描写
マーク・トゥエインがハックルベリー・フィンの冒険を執筆した19世紀後半のアメリカは、南北戦争終結後の激動の時代でした。特に、物語の舞台となるミシシッピ川流域の南部は、奴隷制廃止による社会構造の変化や経済的な困窮など、様々な問題を抱えていました。トゥエインは自らの少年時代の経験を元に、当時の南部の姿をありのままに描き出しています。
作中には、貧困、差別、暴力など、当時の南部社会に蔓延していた負の側面がリアルに描写されています。ハックが逃亡奴隷のジムと出会い、共にミシシッピ川を旅する中で、彼らは偏見や差別に満ちた社会の現実を目の当たりにします。
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奴隷制への痛烈な批判
ハックルベリー・フィンの冒険は、当時依然として根強く残っていた奴隷制への痛烈な批判を含んでいます。ジムは、物語の中で単なる「逃亡奴隷」ではなく、個性と尊厳を持った一人の人間として描かれています。ハックは、当初は社会通念に従ってジムを「所有物」と見なしていましたが、共に旅をする中で友情を育み、人間として対等に接するようになります。
これは、当時の社会では考えられない、極めて進歩的な思想でした。トゥエインは、ハックとジムの交流を通して、人種差別や偏見の愚かさを浮き彫りにし、真の人間愛を訴えかけています。
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社会の偽善に対する風刺
トゥエインは、当時の社会に蔓延していた偽善や欺瞞を鋭く風刺しています。特に、宗教や道徳を錦の御旗にしながら、実際には私利私欲に走る大人たちの姿を痛烈に批判しています。ハックは、大人たちの言動の矛盾や欺瞞に気づき、彼らに対して不信感を抱くようになります。
例えば、ハックを養育するダグラス夫人やワトソン嬢は、敬虔なキリスト教徒を自称しながら、奴隷であるジムを所有しています。また、ハックの父親は、息子を監禁して暴力を振るうなど、道徳的に破綻した人物として描かれています。