デューイの論理学 探求の理論の思想的背景
デューイの論理学における中心的概念 – 探求 – は、古代ギリシャにまで遡る長い哲学史と深く結びついています。
特に、デューイは、プラトンやアリストテレスといった古代ギリシャの哲学者の影響を受けながら、伝統的な形而上学と認識論に挑戦し、人間の経験と探求に基づいた新しい論理学を構築しようとしました。
古代ギリシャ哲学 – プラトンとアリストテレスの影響
デューイは、プラトンのイデア論の影響を受けながらも、それを批判的に継承しました。プラトンは、真の知識は感覚的な世界を超えたイデアの世界にのみ存在すると考えましたが、デューイは、人間の思考や知識は、具体的な問題解決の過程を通して形成されると主張しました。 また、アリストテレスの論理学、特に三段論法は、西洋論理学の基礎を築きましたが、デューイは、アリストテレスの論理学は、静的な知識体系を扱うには有効だが、変化し続ける現実世界における問題解決には不十分だと考えました。
プラグマティズム – 実践と経験の重視
デューイの論理学は、ウィリアム・ジェームズやチャールズ・サンダース・パースらによって提唱されたプラグマティズムの影響を強く受けています。プラグマティズムは、概念や理論の真偽は、その実践的な効果によって判断されるべきだとする立場です。デューイは、このプラグマティズムの考え方を論理学に取り入れ、知識は現実世界における問題解決のための道具として捉えられるべきだと主張しました。
ダーウィン進化論 – 変化と適応
19世紀後半に発表されたダーウィンの進化論は、生物学のみならず、哲学や社会科学など幅広い分野に大きな影響を与えました。デューイもまた、ダーウィンの進化論から大きな影響を受け、生物が環境に適応するように、人間の思考もまた、問題状況に適応しながら発展していくプロセスと捉えました。デューイの論理学において、探求は、まさにこの思考の適応プロセスと捉えることができます。
ヘーゲル弁証法 – 対話と発展
デューイは、ヘーゲルの弁証法の影響も受けています。ヘーゲルは、正(テーゼ)-反(アンチテーゼ)-合(ジンテーゼ)という弁証法的な運動を通して、精神が発展していくと主張しました。デューイは、このヘーゲルの弁証法を、人間の思考過程に適用し、探求とは、問題状況に対する tentative な解決策(仮説)を提示し、それを批判的に検討することで、より洗練された解決策へと発展させていくプロセスだと考えました。
これらの思想的背景から、デューイの論理学は、単なる形式的な推論規則の体系ではなく、人間の経験と探求に基づいた、現実世界の問題解決のためのダイナミックな理論として理解することができます。