## デューイの論理学 探求の理論のテクスト
デューイの主著『論理学:探求の理論』 (Logic: The Theory of Inquiry) は、1938年に出版されました。この著作は、哲学者であり教育学者でもあったジョン・デューイの思考の集大成ともいえる作品です。
デューイの論理学における「探求」
この著作においてデューイは、伝統的な論理学が抱える問題点を批判的に検討し、探求という人間の営みに基づいた新しい論理学の体系を提示しようと試みています。デューイにとって、論理学は形式的な推論規則を扱う学問ではなく、不確実な状況の中で問題を解決し、知識を獲得していくプロセスを探求する実践的な学問です。
探求のプロセス
デューイは、探求を以下の五つの段階から成るプロセスとして捉えています。
1. **当惑**: 探求は、人間が環境との相互作用の中で何らかの問題に直面し、当惑を覚えることから始まります。
2. **問題の確定**: 当惑は、漠然とした状態から、明確に定義された問題へと転換されます。
3. **仮説の形成**: 問題に対する解決策の候補として、仮説が立てられます。
4. **仮説の推論**: 仮説に基づいて、観察や実験などを通じて検証可能な予測が導き出されます。
5. **検証**: 予測と実際の状況を比較検討することで、仮説の妥当性が検証されます。
探求と経験
デューイは、探求を純粋に思考の中だけで完結する営みとは考えず、経験と不可分に結びついたものとして捉えています。探求のプロセスは、経験に基づいて開始され、経験を通して検証され、そして新たな経験へと繋がっていきます。
探求と社会
デューイは、探求を個人の営みとしてのみ捉えるのではなく、社会的な文脈の中に位置づけています。探求は、過去の世代から受け継いだ知識や文化を基盤として行われ、その成果は社会に共有され、未来の探求の糧となります。
デューイの『論理学:探求の理論』は、伝統的な論理学の枠組みを超え、人間の思考と行為、そして社会との関係を深く考察した画期的な著作として、現代の哲学、教育学、心理学など、幅広い分野に影響を与え続けています。