デューイの経験と自然を読んだ後に読むべき本
リチャード・ローティ著 「偶然性・アイロニー・連帯」
リチャード・ローティの「偶然性・アイロニー・連帯」は、デューイのプラグマティズムの伝統を継承し、発展させた作品であり、「経験と自然」を読破した読者にとって、自然な延長線上に位置づけられます。この本は、形而上学や認識論といった伝統的な哲学的概念に批判的な視点を持ち込み、言語、文化、歴史といった要素が人間の知識や価値観に与える影響を強調します。
デューイは「経験と自然」において、経験を主体と客体の二元論を超えた、有機的なプロセスとして捉え直すことを提唱しました。ローティもまた、このプラグマティズムの立場を引き継ぎ、客観的な真理や絶対的な価値基準の存在を否定します。彼によれば、我々の知識や価値観は、特定の言語や文化、歴史的文脈の中で形成されるものであり、常に暫定的なものに過ぎません。
「偶然性・アイロニー・連帯」というタイトルは、ローティの哲学の中核をなす三つの概念を表しています。
* **偶然性:** 人間の生は、必然的な法則や目的によって規定されたものではなく、偶然的な出来事や出会いに満ちている。
* **アイロニー:** 我々は、絶対的な真理や価値基準を求めるが、同時に、それらは存在しないことを自覚している。
* **連帯:** 共通の言語や文化、歴史的文脈を共有する者同士が、互いの差異を認め合いながら、共感と協力に基づいた関係を築くこと。
ローティは、これらの概念を通じて、現代社会における自己と他者、自由と責任、正義といった問題を考察していきます。彼は、絶対的な基準を失った現代社会において、いかにして倫理的な判断や政治的な行動が可能になるのかを、プラグマティズムの立場から探求しています。
「経験と自然」を読んだ読者は、ローティの著作を通じて、デューイのプラグマティズムを現代社会の具体的な問題に適用した実践的な哲学に触れることができます。特に、言語や文化、歴史といった要素に注目することで、人間の知識や価値観の形成過程について、より深く理解することができます。また、ローティの思想は、現代社会における多様性や相対主義といった問題を考える上でも、重要な示唆を与えてくれるでしょう。