## デューイの経験と自然の構成
### 序論
デューイは、伝統的な哲学が経験と自然を二元論的に捉えてきたことを批判し、両者を有機的に結びついたものとして理解しようと試みた。序論では、こうしたデューイの哲学の基本的な立場が示される。まず、近代哲学において支配的であった心身二元論、主観と客観の分離、事実と価値の断絶といった問題が提起され、そうした二元論が人間の経験を分断し、自然を操作可能な対象としてしか捉えられなくさせてきたことが指摘される。デューイは、そうした二元論を乗り越え、経験と自然を統一的に理解する新しい哲学の必要性を訴える。
### 第一部 生ける存在としての経験
第一部では、デューイの経験概念が詳細に展開される。デューイは、経験を単なる認識論的な概念としてではなく、人間を含む生物が環境と相互作用する動的なプロセスとして捉える。経験は、生物の生きた活動であり、そこには感覚、感情、思考、行為などが統合的に作用している。デューイは、伝統的な哲学が軽視してきた感情や行為といった要素を重視することで、経験の豊かさを取り戻そうとする。また、経験は常に変化し、発展していくものであり、そこには不確実性と偶然性がつきまとうことが強調される。
### 第二部 自然の出来事としての経験
第二部では、経験が自然とどのように関係しているのかが論じられる。デューイは、経験を自然から切り離された私的な出来事としてではなく、自然の過程その一部として捉える。自然は、単に物質的な世界を指すのではなく、生命や精神を含む、より広い意味での環境を意味する。デューイによれば、人間の経験は、自然の進化の過程から生まれたものであり、自然の法則や制約を受けながらも、その中で独自の創造性を発揮する。
### 第三部 経験の組織としての知識と理性
第三部では、知識と理性の本性が経験に基づいて再定義される。デューイは、知識を客観的な世界の鏡像としてではなく、経験の過程を通じて形成される道具的なものとして捉える。知識は、問題解決や環境への適応のために用いられるものであり、常に変化し修正される可能性を含んでいる。また、理性は、抽象的な推論能力としてではなく、経験を反省し、問題解決のための方法を探求する能力として理解される。デューイは、経験と知識、理性との連続性を強調することで、実用主義的な認識論を展開する。