## デュルケームの宗教生活の原初形態と言語
デュルケームにおける宗教の定義
デュルケームは、著書『宗教生活の原初形態』において、宗教を「聖なるものと俗なるものの二分法」に基づいて定義しました。彼によれば、聖なるものは、集団生活において特別な力や価値を持つと信じられているものであり、タブーや儀式などを通して俗なるものとは明確に区別されます。そして、宗教とは、この聖なるものを対象とした「信念と実践の体系」であるとされます。
トーテミズムにおける言語の役割
デュルケームは、オーストラリア先住民のトーテミズムを分析することで、宗教の起源と本質を探求しました。トーテミズムにおいては、各氏族が特定の動植物(トーテム)を信仰の対象としています。デュルケームは、トーテムは氏族自身の象徴であり、氏族の結束とアイデンティティの源泉となっていると主張しました。
集団表象としての言語
では、トーテムという象徴はどのようにして氏族成員に共有され、世代を超えて継承されていくのでしょうか。ここで重要な役割を果たすのが言語です。デュルケームは、言語を単なるコミュニケーションの道具ではなく、「集団表象」を表現する手段として捉えました。集団表象とは、社会集団に共有された概念や価値観、感情などを指します。
トーテムを表す名前や神話、儀式における言語表現などは、氏族成員に共通の認識や感情を喚起し、氏族への帰属意識を強化する役割を果たします。このように、言語はトーテミズムにおける聖なるものを表象し、伝達する上で不可欠な要素となっています。
言語の聖なる側面
デュルケームは、トーテミズムの分析を通じて、言語そのものが聖なる側面を持つことを指摘しました。トーテムを表す名前は、単なる記号ではなく、トーテムそのものと同一視され、畏敬の念を持って扱われます。また、神話や儀礼で用いられる言語は、日常的な言語とは異なる特別な力を持つと信じられ、聖なるものの世界と繋がる手段として機能します。
まとめ
デュルケームは、宗教の起源と本質を探求する上で、言語に注目しました。彼によれば、言語は単なるコミュニケーションの道具ではなく、集団表象を表現し、伝達する手段であり、宗教的な感情や信念を形成する上で重要な役割を果たします。特にトーテミズムの分析において、言語は聖なるものを表象し、氏族の結束とアイデンティティを維持する上で不可欠な要素として位置づけられています。